神経難病の訪問看護について

こんにちは、タツミ訪問看護ステーション鷺沼の高橋です。

本日は神経難病の訪問看護についてお話したいと思います。

まず、はじめに神経難病とはどのような病気なのかをお伝えします。

神経難病とは、神経系が障害される希少疾患のうち、原因がはっきりわかっておらず、有効な治療方法がなく、長期の療養を必要とするものを指します。

神経難病とされる主な病気には、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、多発性硬化症、重症筋無力症、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症などがあります。

なお、神経難病は原因がまだ判明されていないと言いましても、ある程度まで判明しているものや、根本的に治すことは難しいけれども、医療的ケアによって少しでも生活しやすくすることは可能です。

神経難病のそれぞれの症状について

神経難病のそれぞれの症状などを下記に解説します。

パーキンソン病

黒質のドパミン神経の減少に加え、他の中枢神経や自律神経もダメージを受けます。

これにより、手足の震えなどの代表的な症状に加え、精神症状や自律神経の障害があらわれることもあります。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

運動神経が損傷し、脳から筋肉への指令が伝わらなくなる疾患です。

初期の症状は、手足に力が入りにくくなる(四肢型)、舌や口が動きにくくなる(球麻痺型)、呼吸に支障がでる(呼吸筋麻痺型)など様々で、その後、症状が他の部位に進行します。

多くの患者さんは発症から短期間で急速に進行しますが、中には10年以上にわたってゆっくり進行する患者さんもいます。

脊髄小脳変性症

脳の中にある小脳が障害(小脳と脳幹が変性し、萎縮する)を受けることで、主に小脳の神経細胞の変性により、「歩行時にふらつく」、「ろれつがまわらず話しづらい」、「不規則に手がふるえ目的の物をつかみづらい」などの症状をきたす病気の総称です。

遺伝性と非遺伝性(孤発性)に大別され、日本全国で3万人を超える患者さんがいると推定されています。

多発性硬化症

多発性硬化症では炎症によってミエリン[髄鞘(ずいしょう)]が壊れ、中の電線がむき出しになって[脱髄(だつずい)]、
信号が伝わりにくくなったり、あるいは異常な信号を伝えたりすることがあります。

その結果、視力障害、運動障害、感覚障害、認知症、排尿障害などさまざまな神経症状があらわれます。

重症筋無力症

重症筋無力症は、神経と筋肉の間の信号伝達が妨げられる自己免疫疾患で、筋力低下の発作を引き起こします。

免疫系の機能不全により起こります。通常、まぶたの下垂と複視が起こり、運動後は筋肉の著しい疲労と筋力低下が起こります。

進行性核上性麻痺

脳の中で大脳基底核、脳幹、小脳といった部分の神経細胞が徐々に減って、転びやすい、眼球が動きにくい、飲み込みにくい、といった症状がみられる病気です

多系統萎縮症

小大脳、小脳、脳幹、脊髄といった脳のさまざまな部位が障害を受けることで発症する病気です。

大脳皮質基底核変性症変性症

初期の特徴として、症状が身体の左右どちらか一方だけに認められるということがあげられます。

また、大脳皮質基底核変性症の症状は大きく分けてパーキンソン症状大脳皮質症状2種類あります。

神経難病を抱えるご利用者への訪問看護について

ここから神経難病を抱えるご利用者への訪問看護についてお話しします。

神経難病の療養者は、年単位でいくつもの障害を抱えることになります。徐々に失われていく機能への支援や医療への意思決定のサポートが必要となります。

具体的に神経難病の方への訪問看護における支援の要点をいくつか記します。

心身の状態を観察して、進行に合わせたケアを行う

支援の要点のひとつ目としては「心身の状態を観察して、進行に合わせたケアを行うこと」です。

疾患によって進行スピードは異なりますが、上述した症状のように、いずれも運動障害、構音障害、嚥下障害、呼吸障害などが合わさって進行ししていきます。

ですので、日々の心身の状態を観察し、変化する病状を的確に捉えることが求められます。

そしてその時の病状に合わせた看護ケアを行うことが重要になります。(主治医への報告連絡~指示の連携をとりながら実施します。)

多職種チームの情報共有を効果的に図る

支援の要点のふたつ目としては「多職種チームの情報共有を効果的に図ること」です。

神経難病の場合は、支援が多岐にわたるため、多職種のチームでケアにあたります。

訪問看護師以外に、往診医、専門医、医療相談員、保健師、生活相談員、ケアマネジャー、訪問介護員福祉用具事業者、訪問歯科医、耳鼻咽喉科、言語聴覚士、作業療法士など、10人以上のスタッフで支援にあたることも良くあります。

多職種で関わる人が多い在宅医療の場合、情報共有がとても大切になります。

療養者の状態以外にも、機器の設定やコミュニケーション方法についても情報を共有することで適切なケアにつながります。

訪問看護師が情報共有のパイプ役になることもあります。

神経難病の療養者への訪問看護は、1回30〜90分、週に複数回訪問するケースが多いです。一日で訪問看護師以外のたくさんのスタッフが関わる時間も多くなります。

本人の状態や生活状況などの情報が分断させないことが有効な支援につながると思っています。

医療処置の意思決定のサポートを行う

支援の要点の三つめは「医療処置の意思決定のサポートを行うこと」です。

神経難病は段階的に障害が進行していきます。先の経過を見通しながら、医療処置を検討しなければなりません。

説明はもちろん医師が行いますが、看護師は補足したり、療養者やご家族の気持ちに寄り添い、意思決定のサポート役になります。

例えば、嚥下障害がひどくなったら胃ろうをつくるかどうか、肺炎を繰り返すなら気管切開をするかどうか、など一つひとつ意思決定が必要です。

有効な治療法が解明されておらず、病気を抱えながらも在宅で生活をしてる神経難病の療養者は、進行する障害への苦しみに加えて何度も人生の選択を迫られます。

訪問看護師は、そのような療養者に対し、疾患から考えられる症状やその対策、緊急時の対応などを予測しながら、意思決定をサポートします。

この意思決定は、療養者本人のものであることが望ましいです。

本人抜きでご家族が医療従事者と進めてしまうと、のちに皆がつらくなることもあります。

これからどのように生きてゆくか、療養者の意思決定が難しくならないうちに希望を聞くことも大切です。

難病支援の制度を理解する

支援の要点の四つめは「難病支援の制度を理解すること」です。

どの制度や支援サービスを受けるかは、行政などの専門家が説明や手続きのサポートをしますので、訪問看護師は事細かく知っている必要はないですが、制度の大枠がわかっていると、看護師として介入する自身の立ち位置が理解できて看護ケアの精度が高くなります。

神経難病の療養者のための制度化における主なサービスは以下のようになります。

【介護保険制度によるサービス】

訪問看護/訪問介護/訪問リハビリテーション/訪問入浴/24時間地域巡回型訪問サービスなど

※上記サービス以外にも介護ベッドなど、福祉用具の貸与も制度の対象

【医療保険制度によるサービス】

訪問看護/訪問リハビリテーション/医療費の助成など

※医療保険制度で訪問看護サービスを受ける場合、週4回以上の訪問が可能。複数の訪問看護ステーションを利用でき、緊急時訪問、長時間訪問も受けられる

【障害福祉サービス】

補装具の給付(意思伝達装置、日常生活用具など)/重度訪問介護/ホームヘルプサービス/短期入所など

※障害者自立支援法に基づくもので、市区町村が利用申請の窓口となる

【難病対策によるサービス】

医療費の助成/人工呼吸器使用者への訪問看護/難病患者ホームヘルプサービス/日常生活用具の給付など

※難病法に基づくサービスで、難病指定医による診断を受け、各都道府県に申請すると、医療受受給者証が交付され、特定医療費が助成される。

このように、神経難病の訪問看護は上記制度の3つによりサービス提供ができます。

それだけに、訪問看護は、療養生活を支えていく上でとても重要な役割で、神経難病の療養者の心身の支えになっているのです。

さいごに

病棟の看護師にとって、在宅での神経難病の療養者へのケアは、わからなことや不安なこともあると思いますが、一人ひとりと長期間、向き合いながらケアをする仕事は、看護師としての大きなやりがいになります。

もちろん神経難病だけではなく、訪問看護にはたくさんのやりがいや学びが潜んでいます。

訪問看護にチャレンジしたい看護師には、ご一緒の体験していただけると嬉しいです。

Follow me!