幅広く利用が進む訪問看護~精神疾患の利用も増加中
こんにちは、タツミ訪問看護ステーション鷺沼の高橋です。
本日は、年々ニーズが高まっている「精神科訪問看護」についてお話しさせていただきます。
実は、我が国の精神疾患の患者数は増加傾向にあり、平成29年には、外来患者と入院患者で400万人を超えています。
これは日本人のおよそ30人に1人の割合です。下記グラフをご覧ください。
出典元:厚生労働省ホームページ
疾病別にみると、とくに統合失調症、躁うつ病など気分障害の患者数が多く、また平均寿命が長くなったことで、アルツハイマー病、血管症などの認知症の発症も増えていることがわかります。
出典元:厚生労働省ホームページ
年々患者数が増加している精神疾患ですが、その一方で精神病床の平均在院日数は、減少傾向にあります。
近年、国は少子高齢社会に対応した医療制度の実現に向けて、多くの病床の在院日数の短縮を進めています。
その中で平均在院日数が、最も短縮されたのが「精神病床」です。
このような背景からご自宅でケアを受けられる「精神科訪問看護」のニーズは、年々高まっています。
「精神科訪問看護」とは
精神疾患にかかると、通院や入院や施設に通ったりして症状を抑えたり、アドバイスを受けます。
それ以外に看護師が出向いてケアを行う訪問看護を受けることができます。
「精神科訪問看護」とは、精神疾患や心のケアを必要とされる方に、看護師等の専門職がご自宅へ訪問し、病状による不安や悩み、日常生活を送るためのアドバイスや支援を受ける事ができるサービスです。
近年では、「精神科訪問看護」の利用者もとても増えています。
次の円グラフは、訪問看護利用者の主傷病の割合を表したグラフです。
出典元:厚生労働省ホームページ
精神および行動の障害が約35%となっています。
「精神科訪問看護」を行う訪問看護ステーションも年々増加、同時に「精神科訪問看護」を目指す看護師も増えています。
「精神科訪問看護」は、精神科訪問看護療養費の算定要件を満たして、地方厚生局に届け出することでサービスを提供することができます。
もちろん私たちのステーションも届け出をしています。
「精神科訪問看護」の内容とは
先にも述べましたが、「精神科訪問看護」とは、看護師・精神保健福祉士・作業療法士などが、精神疾患を発症してケアを必要とするご利用者の自宅を訪問し、主治医の指示のもと、ご利用者が安定した日常生活を送るためのケアやサポートなどを実施するサービスです。
大きく下記7つのケアとなります。
(1)病状の観察
バイタルチェックを行い、コミュニケーションをとりつつ病状をチェックし、患者さんの状況を細かく把握します。
精神科の訪問看護では、医療処置をすることはほとんどありません。その代りご利用者様とのコミュニケーションが重要となってきます。
コミュニケーションによって、状態の変化や悪化に気づくことがあり、早期発見につながったりします。
(2)服薬管理
精神疾患の在宅での治療は服薬が中心です。ご利用者が正しく服薬ができるようにすることも重要な仕事です。
過量服薬をしてしまったり、自分の判断で服薬を止めてしまうケースがあります。そこで訪問看護では、用法・用量を守って服薬できるようサポートします。
(3)セルフコントロールの援助
精神症状を安定させるには、服薬以外にも日常生活の中で精神症状をセルフコントロールしていくことも重要です。
病状の観察で把握できた症状に対し、対処法をご利用者様と一緒に考えることがあります。
(4)他職種との連携
医療機関や市区町村の担当保健師、訪問介護事業所など精神疾患のご利用者を支える他職種の関係者と情報共有をします。
細やかな情報共有が症状の悪化、再入院の防止につながると思います。
(5)日常生活リズムの調整
日常生活(衣食住)を観察し、生活リズムの調整を行っていきます。
生活リズムが崩れると、不眠や体調不良に陥り症状が悪化してしまいます。
(6)ご家族からの相談への助言や援助
精神疾患を抱えるご家族の悩みを聞いたり、助言をすることで、
不安が和らぎ、ご利用者の症状の改善につながることがあります。
(7)社会復帰のための支援
地域で生活するにあたり利用・活用できる社会資源の説明や支援をしたり、社会とのかかわりに必要な様々なアドバイスをすることも訪問看護の仕事のひとつです。
このように、「精神科訪問看護」では、入院せず日常生活を送るためにご利用者ひとりひとりを把握した上で、ニーズにあったいろいろな支援を提供していきます。
「精神科訪問看護」で使える公的保険ついて
最後に「精神科訪問看護」で使える公的保険ついてお知らせします。
訪問看護では公的保険の介護保険や医療保険を利用することで費用の多くが賄われます。「精神科訪問看護」は、医療保険が適用されるケースが多いです。
大まかな説明にはなりますが、以下が保険適用の概略になります。
「精神科訪問看護」で使える公的保険
要支援・要介護認定を受けている65歳以上で、精神疾患のうち認知症で訪問看護を利用する場合は主に介護保険が適用されます。
65歳以上で介護保険の認定を受けている方でも、厚生労働省が指定した難病を患われている場合、精神疾患により精神科訪問看護が必要な方は医療保険の訪問看護が適用になります。
40歳以上65歳未満で、特定疾患が原因で要支援・要介護の認定を受けている方は介護保険が適用となります。
要支援・要介護の認定を受けていない40歳以上65歳未満の方は、医療保険の訪問看護が適用となります。
40歳以上65歳未満で精神疾患で訪問看護を利用する場合は、大半が医療保険適用となります。(40歳未満で精神疾患で訪問看護を利用する場合は、すべて医療保険適用となります。)
医療保険を活用して「精神科訪問看護」受けるときの自己負担については、一般的な国民健康保険又は健康保険なら3割負担となります。
尚、自立支援受給者証や医療証などを併用することで、1割負担になります。また、医療券を持っている生活保護受給者の方は負担額なしでサービスを受けられます。
公的保険が利用できたり、状況によっては自己負担を減らすことができるなど、国も在宅療養の精神疾患への支援の充実を図っていることが見受けられます。
さいごに
年々ニーズが高まる「精神科訪問看護」についてお伝えしました。関心を持たれている看護師さんも多いと思います。
在宅医療を目指す看護師にとって、高齢者の訪問看護に加え、「精神科訪問看護」は、知識や経験を広げる、やりがいにつながる仕事になると思います。
さまざまな疾病や症例の訪問看護を体験して、キャリアアップをしたい看護師さんからのお問い合わせをお待ちしております。